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札幌家庭裁判所岩見沢支部 昭和38年(少)1272号 決定 1963年10月28日

少年 G(昭二六・三・七生)

主文

少年を教護院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、昭和三六年八月二八日窃盗事件で警察署より岩見沢児童相談所長に通告され、同年一二月同所長から児童福祉法二七条一項二号の保護処置をうけ、その指導をもうけていたものであるが、依然として素行おさまらず、家庭に落着くことなく、実弟S(本日教護院送致)を誘い、Wらと共に街をはいかいし、機会ある毎に窃盗の非行を重ね、浪費するなど保護者の正当な監督に服しない性癖があり、その性格と環境に照らして将来刑罰法令に触れる行為をなすおそれがある。

(法令の適用)

少年法三条一項三号イ

(保護処分に付する事由)

少年の家庭は、父が酒乱のため、家庭内は夫婦喧嘩などいざござが絶えず(母はこのため一時少年ら子供を連れて家出をなしたことがあり、更に弟Tは父が飲酒を始めると家から逃げる準備までする。)、母は特に問題はないが子供に対しては盲愛的で、その指導能力は欠如しており、父母共稼で少年らを放任状態においたことなどその問題要因は大きく(少年調査票参照)、このような家庭内で育成した少年は、家庭に対する不満、父母に対する不信感などから義兄(異母)Y(教護院収容歴あり、本年一〇月から家出中)およびその不良交遊者らの仲間入りをし、その影響をも強くうけて、性格的にかなりゆがんで、その問題要因は多く(鑑別結果参照)、喫煙、盗みなどの問題行動は小学三年ごろから始まり、現在ではなかり習癖化している。そして、学校の内外において、不良視されるなどのことで対人感情にもかなりゆがみができ、これらからの逃避場面としてますます喫煙、はいかい、盗み、浪費など問題行動をとり、その反社会性は根深いものとなつている。

従来、児童相談所、学校、警察等の諸機関により在宅のまま少年の補導を試みて来たものの、その素行はおさまらず、依然として盗みなどの非行を続け(本年七、八月中においても弟Sらと共に二〇回前後の盗みを犯している。)父母は少年に対し、熱意を示しつつあるがその問題要因は解決されず且つ、右諸機関に対しては感情的になつているなどその経過から見て、少年を在宅のまま補導することは極めて困難であることが認められる。

以上のとおり、少年の性格、問題傾向、家庭環境などを考慮すれば少年の健全な育成を図るには、施設に収容の上、生活指導を徹底させて社会性を身につけさせることが最も適当であると認められるから、少年法二四条一項二号により主文のとおり決定する。

(裁判官 天野耕一)

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